賃貸物件を契約する際には、大きく分けて
「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類が
あります。一般的には普通借家契約の物件が多く見られますが、まれに「定期借家契約」の物件に出会うこともあるため、内容をよく理解しておくことが重要です。
定期借家契約の物件は、契約期間が満了すると原則として更新されないという特徴があり、知らずに契約して
しまうと、思わぬタイミングで退去しなければならない可能性もあります。特に長く住むことを想定している方にとっては、大きなトラブルにつながることもあるので注意が必要です。
この記事では、定期借家契約とはどういったものなのか、メリット・デメリットをわかりやすく解説していきます。賃貸契約を結ぶ前に知っておきたいポイント
として、ぜひ参考にしてください。
定期借家契約を選ぶメリットとは?
■ 短期間の入居に柔軟に対応できる
定期借家の大きな魅力の一つが、契約期間をあらかじめ決めて借りられる点です。契約期間は1年程度が一般的ですが、物件によってはもっと短い期間での契約が可能な場合もあります。
これは、転勤や一時的な住み替えなど、限られた期間だけ住まいが必要な方にとって非常に便利です。
普通借家契約では1年未満の契約が基本的に認められていないため、こうしたニーズには定期借家が適しています。
貸主側にとっても、契約終了後に正当な理由を問わず退去を求めることができるため、後々のトラブルを避けやすくなります。
立ち退き料などの負担も発生せず、貸主・借主双方にとって一定のメリットがある契約形態と言えるでしょう。
■ 相場より賃料が安いケースもある
もう一つの利点は、定期借家契約の物件は普通借家に比べて家賃が割安に設定されていることがある点です。
これは、契約期間に制限があることや、再契約できないことなど、借主にとってのデメリットを軽減する目的で賃料を低めにしているためです。
中には礼金が不要な物件や、建て替え・取り壊しが予定されている物件で、相場よりも条件の良い契約ができるケースもあります。コストを抑えたい学生や新社会人など、短期間だけ暮らしたい方にとっては非常に魅力的な選択肢となるでしょう。
貸主にとっても、取り壊しまでの間だけ貸し出すことで空室リスクを回避しつつ、収益を得ることができます。
期間限定の活用法としても定期借家契約は有効です。
■ 面倒な更新手続きが不要
定期借家契約では、契約期間が満了するとそのまま契約が終了するため、更新の手続きが必要ありません。これは普通借家契約と大きく異なる点で、更新にともなう
書類のやりとりや手数料などの手間を省くことが
できます。
そのため、一定期間だけ住むことを前提にしている方や、ライフスタイルにあわせて定期的に引っ越しをする方には特に向いている契約形態です。契約満了と同時にスムーズに退去できる点も、煩雑さを避けたい人には大きなメリットと言えるでしょう。
定期借家契約を選ぶ際のデメリット
■ 途中解約には条件が必要
定期借家契約では、途中解約をする際に条件が設けられているため、気軽に解約することができません。
たとえば、契約期間を満了せずに解約を申し出た場合、残りの期間の家賃を請求されることがあります。
ただし、転勤や介護などやむを得ない事情がある場合、または契約物件の床面積が200平方メートル未満の場合は、解約が認められるケースがあります。この場合、申し出から1ヶ月後に契約は終了します。
さらに、契約書に特約として解約権を設定することで、借主と貸主双方の合意で途中解約が可能になる場合もあります。
■ 再契約できないケースが多い
再契約は基本的に難しいと考えた方が良いでしょう。
再契約が可能な場合もありますが、それは貸主と借主の合意がある場合に限られます。
定期借家契約は多くが、転勤などの一時的な住居や、建て替え・取り壊しを予定している場合に設定されるため、再契約は基本的に想定されていません。
また、契約期間中に近隣住民とのトラブルや家賃の滞納などがあった場合、再契約はほぼ不可能となります。
再契約ができる場合でも、更新契約とは異なり、従来の条件より家賃が値上がりするなど、契約条件が変更されることが多いため、再契約を希望する場合は注意が必要です。
定期借家契約を選ぶ際のポイント
■ 賃料の増減額請求について、特約が優先される点に注意
賃料の増減額請求に関して、特約が契約書に記載されている場合、その内容が優先されます。
賃料の増減額請求とは、経済状況の変化などにより現在の賃料が近隣相場と比較して不適当だと感じた場合に、貸主または借主が賃料の改定を求めることを指します。
通常、両者が請求できる内容ですが、契約書に
「賃料の改定は認めない」といった特約が含まれている場合、賃料の増額や減額を求めることはできません。
したがって、契約時に特約事項をよく確認し、後々賃料の変更を希望しても特約の制限を受けることを理解しておく必要があります。
■ 次の住まいをあらかじめ確保しておく
定期借家契約は、契約期間が短期間であることが多いため、契約終了後に次の住まいを確保しておくことが重要です。契約終了のタイミングで住む場所が見つからないと困ってしまいます。
また、もし次の住居が決まった際には、フリーレント物件(一定期間家賃が無料)を探して、
旧居と新居の家賃が重ならないように調整することをおすすめします。
これにより、家計への負担を抑えることができます。
■ 定期借家契約の内容をしっかり理解し慎重に契約する
定期借家契約は、借主にとっては不利な条件も多い一方で、家賃が普通借家より低く設定されることが一般的です。
そのため、短期間だけ住みたい方にはお得な契約となる場合もあります。
例えば、転勤やマイホームの建設までの間など、一時的な住まいを探している方には、
定期借家契約が適していることが多いです。